ごめんなさい、でも、ありがとう

「寒いねー」
「うん、今日はめちゃくちゃ寒いよ!
ところでさ、美咲はさあ、彼とどうだったのよー?」
「そんなんじゃないって、本当に、まじであたし恋愛感情とかないしさあ。
ねえ由美わかってよー」

今日は12月25日。


昨日はクリスマスイブだった。
あたしはこれと言ってそこら辺のカップルには興味もなく
みんなでわいわいクリスマスパーティーをやってるのがお似合いかなって思った。
だから、昨日は親友の由美の家で由美が作ったケーキを食べたり、
とにかく寒いから由美んちでぬくぬくとしてた訳。

みんなホワイトクリスマス!とかって喜んでたけど、
ちょっと雪が舞い降りたくらいじゃあねえ。
あたしは、ロマンティックにはならないなあ。

とにかくみんなで料理して、食べておしゃべりして、騒いだのが楽しかった。


でもね、
気になる存在がいるの。
それは、高校1年の時からずーっと友達やってる男の子ユウタ。
何だか最近あたしの行くところ行くところにいるのよね。

昨日もあたしが野菜を切ってたら、まじまじと見てきて、
「俺もやっていい?」
とか言ってさ、隣で不器用に野菜切ってるし。

止めてよ、勘違いされちゃうじゃん。
って言いたかったけど、他の友達の手前言えなかった。


そして、イブがあけた今朝。
寒さにがちがち震えながら由美と二人で、学校へ登校している訳。
「ねえ由美、まじでさあユウタやばいってば。
由美だからいうけど、昨日さあ、隣に来てサラダ作ってたでしょ?
何だかおかしいってー」
「でも、美咲が教えてやってたじゃん」
「だってほっとけないじゃん。
本当にユウタってば台所仕事苦手なはずなのにやろうとしてんだからさ」
あたしは学校指定のコートのポケットに手を突っ込んだまま電車を待ちながらため息をついちゃった。

「ああもう、寒いー。
凍ってるよー。」
とか言いながら電車を待ってるとあたしたちが乗るべき電車が到着した。
超満員。
でも、あったかい。
周りの女子高生たちは、
「ああ、なんでこんな日に学校あるんだろうねえ。
人肌恋しいしあいつと一緒にいたかったー」
などという会話をどこからともなくしていた。

「由美は片思いなんでしょ?
やっぱ彼がいたらあのこたちが言ってるような気持ちになるの?」
あたしは学校に到着するなり由美に聞いてみた。
「もちろんなるよー。
美咲だってつい1年前は似たようなこと言ってたよ」
「ああもう、あれは終わったの。
もうあたしはシングルライフを楽しむの。
だってさあ、そんなくっついただの別れただのって何だかめんどうくさくて。
友達とわいわいやってるのが今のあたしにはいいの」
これは本当の話だ。

1年前は、あたしにも彼がいたけれど、そう簡単に次の恋には行けない。
恋愛疲れというか、何というか。
バイトで知り合った年上の彼だったけど、大失恋をしてしまった。

今はこうやってわいわいやっているのが楽しいし、そう簡単に傷は癒えないのだ。
そうそう、去年の今頃は彼と楽しくやってたっけ。
でも、いい思い出だ。

あたしが失恋したときも、そういえばユウタがそばにいたっけ。
一緒にカラオケに誘ってくれたり。
わいわいカラオケして、気がついたことだけど、ユウタはあたしを元気にさせるために人を集めたのだ。
そんなことを思い出しながら終業式に行くために体育館に行く途中、
ユウタがあたしの方にやってきた。

「美咲、ちょっと」
あたしはユウタが腕をひっぱってきたもんだから、
ついついそっちの方に行ってしまった。
防御しようと思っても、身体の準備も心の準備もできていなかったのだ。
もう周りは冷やかすし、あたしはたまったもんじゃあないよって感じだった。

「なによユウタ。」
「今日午後2時、いつものカラオケ行こ?」
「え?!」
「待ってるから」
会話はたったのこれだけ。

用件だけ言って、ユウタは男子のグループの中に消えてしまった。
よりにもよって、こんなに人が込んでて、
あたしはべつにユウタとカラオケ二人でしたくないんだけど。
まあいっか。
誰か来るのかな。

終業式が終わってこのことを由美に話すと
「一人で行ってきな」
とあっさり言われた。
ああ、あたしには見方はいないのね。

成績表貰って近くのファーストフードで、軽くランチしながら由美としゃべって、
いよいよ呼び出された時間に行かなきゃ間に合わない時間になった。
「行っておいで」
由美の言葉に押されて、あたしはカラオケに行った。
「じゃあ由美、また電話するからー」
と叫んでから5分もかかってゆっくり歩いた。

2時ぴったり。

ユウタは、カラオケボックスのフロントで待っていた。
「どうしたの?」
「まあとりあえず入ろう」
「おまえとカラオケ二人っていうのは初めてだなあ」
と言いながら、ボックスに入って行った。
あたしも一緒に入るしかなかった。

ユウタは甘いラブソングのバラードばっかりなので、
しょうがないからあたしはちょっとアップテンポのにしたり何だか気を使っちゃった。
それに、ユウタってばムードが出ると腕くんできたりするし。

あと5分の電話がかかってきた。
「あ、5分だ。 どうする?」
「俺お前に話ある」
「何?」
「美咲のことが好きだ。
今までずっと好きだった。
これからもずっと好きという気持ちでつきあいたい」
「そんなこと言われても・・・」
というあたしの口をユウタは塞ぐようにあたしを抱き寄せて強くキスしてきた。

「困るよ、ユウタ、やめてってばー」
「バイト先の彼だか何だか知らねえけど、
このおまえの唇も身体も心も全部汚されたんだろ?」
ユウタはまるで狼だった。
あたしに抱きつき、何回もキスしようとするし、
身体中をまさぐられ、胸も揉まれた。
もう少しでスカートに手を入れられそうだった。

一瞬、ユウタの手の温もりが気持ちよくて
Noと言えなくなりそうだったけど、あたしはまだ心の整理がついてないのだ。
「ごめん、ユウタ」
「あたし前の彼と別れてからそんなに時間過ぎてないしさ、
それにユウタのことは友達としてしか見れないよ、ごめんね」
「俺もごめん、帰るか」
「じゃあね」
「また学校で」
あたしは罪悪感に苛まれて泣きそうだったけど、何とか自分の家まで我慢した。


あたしは人を一人傷つけたんだ。
あとからあとから涙が流れてきた。
そして、ユウタの口付けと少しのアイブに感じてしまったことがまた罪悪感だった。
でも、これは誰にも言えないだろう。
ユウタとは友達でいたい。
今は友達がいいのだ。
あたしも適当な態度じゃなくて、ちゃんとした一人の女として、
もう心の中もけじめをつけなきゃ。

今は罪悪感でいっぱいだけれど、また由美に電話して、
由美と一緒に、こんどは女だけでお菓子でも作ろうかな。

期待させちゃったな。
ユウタには。
ごめんなさい、でも、ありがとう。



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