トップになりたくても・・・

担任の橋本先生は、名前を呼び上げて、一人一人に通知表を渡していく。
それぞれ一人ずつに、先生が言葉をかけている。
みんな、楽しそうだ。

僕は、あまり人と話すのは得意なほうじゃない。
特に女性と話す場合なんかは、変に意識しちゃって緊張してしまう。
それでも、このクラスの人たちは明るい人たちばかりで、
いいクラスに入れてよかったと思っている。

僕の名前が呼ばれ、橋本先生のところへ行く。
「いつも優秀な成績ですごいわ」
「クラスで1番になれましたか?」
「あと、もうちょっとだったのよ。本当にちょっとの差なの」
「またカツヤくんに勝てなかったということですか」
またカツヤの成績を追い抜くことができなかったと。
「あの子に勝てなくても、十分な成績よ。
あなたがた二人がこのクラスをエリートクラスにしちゃったんですもの」

「でも、また、カツヤくんに負けたんですよね」
負けたということが悔しくて、通知表を受け取るとき投げやりな態度をとってしまった。
「その態度は何ですか?」
「悪気はなかったんです。反省します」
またしても、反抗的な態度がでてしまった。
これは僕の悪い癖だ。
落ち込んでしまったり、いやなことがあるとすぐ態度に出てしまう。
「もう少し大人になればいいんですよね。わかりました」
どうして、こんなことを言ってしまうのだろうかと思いつつも、言ってしまう僕。
橋本先生の表情もちょっと険しくなったようだ。
「気をつけます。ごめんなさい」
とりあえず、厄介なことになる前に謝って、通知表をもらい席に戻った。

カツヤくんも僕と同じで人と接することを進んでしようとしない。
僕と違うところは、そのことをまったく気にしていないというところかな?
そして、彼はまったく笑ったところを見せない。
僕の場合は、面白ければ笑うし、やっぱり人と接していたいというのがあるから、
似ているようでも、根本的に違っていると思う。

人付き合いも下手で、体育系もさっぱりダメ。
ゲームが得意というわけでもなく、カラオケだって自信がない。
趣味はクラシックをゆったりと聞くこと。
存在感が薄いと言われれば、確かにそうだ。

中学生のとき、成績が初めて学年1位になったとき、注目された。
そのときは、たまたま勉強したところがテストに出題されてラッキーだったけれど、
すごくうれしかった。
目立たない僕が、注目されるということがうれしかった。
それ以来、僕は勉強をするようになった。

よこしまな考えかもしれないけれど、
僕が勉強するというのは上位になって目立ちたかったからだ。
この高校に入学してからも、成績上位を収めた。
1年のときに、いくら勉強しても追い越せない人物がいることを知り、
愕然とし、しばらくはプレッシャーにさえなっていた。
2年になって、その人物カツヤくんと一緒のクラスになり、これまたラッキーだった。
僕がライバル視している人物と身近にいられることは、とても刺激になった。

今まで、カツヤくんに勝ったことがない気がする。
残す3学期は、3年生にとってはあまり重要度がない。
だから、そんなときに、勝ってもうれしくはない。

いくら努力しても上になれない人間ということを思い知らされた。
才能のある人間。
努力が報われる人間。
努力しても報われない人間。
他にもいろいろなタイプの人間がいるかも知れないけれど、
今の僕に思いつくタイプはその3種類。
そして、悲しいことに、僕は努力しても報われないタイプ。

勉強ばかりが人生でないというけれど、
こんな挫折感を感じたまま、これからどんな人生を送ればいいと言うんだろう。



リラックスルーム トップへ 小さな図書館 トップへ