「キャー、やっぱりペアリングでよかったよねー」
美奈子が言った。
「美奈子はお揃いが嬉しいんだね」
あたしも笑顔になる。
あれから、二人とも花屋で修行し、美奈子には負けちゃうけど、
それなりのお花屋さんを開けるようになった。
オープンをもうすぐ控えているというのに肝心の二人の家をみつけていなかった。
お店は本当にお店しかできないし
お店の2階はフラワーアレンジメントとかに使いたいとか、
お花を教えるスペースにしたいとか美奈子が言ってるし、
ぎりぎりで準備したもんだから家をみつける暇がなかった。
しかし、物件を見ながら美奈子はまだ黄昏ているのかお互いの指輪を見ている。
この指輪をはめるまでにいろんなことがあった。
海でお互いの気持ちを確かめ合ったり、ローズピンクの紅筆を交換したり、
婦人科に行ったり・・・・。
花屋をやろうと言い出したのは美奈子なんだけれど、
あたしは最初しっかり考えていなかった。
OLをしているとそんな暇などないと言いつづけていた。
でも、花屋をやりたい、という美奈子からのオーラが伝わってきて
私もその気になった。
美奈子を愛するように花にも愛情を注いだ結果だった。
「ユカー!二人で花束作ろうね」
あたしが車を運転していると美奈子がそんなことを言い始めた。
「そうね。
まったくお願いだからこれから見る物件のこと考えてよー!」
とあたしはいいながらいつのまにか笑顔になっていた。
なぜこんなに心がやさしくなれるのだろう。
「はいはい。
次行くとこここだよね?
カーナビに入れちゃって。」
「はいはい。
駅から歩いて5分。
うーん。
でも、家賃高いなあ」
とあたしが言うと、
「お店からは近いの。文句は言わない」
と美奈子は言う。
「ゆかー!
ところで、お花屋さんの準備するようになってからずいぶん細くなったよ。
大丈夫?」
「ふん!
今までが太ってたんだもん」
とあたしは言った。
確かにそうだ。
でも、お肌が綺麗になったような気がする。
こんなうきうきしているなんて恥ずかしくて美奈子には知られたくなかった。
もうすぐ到着だ。
「うわ、ここやっぱり駅から大分あるじゃん。
でも、お店にすんごい近い」
そう言いながらあたしは車を停車させた。
「こんなところにマンションなんてあったっけー?!」
かなりびっくりした様子で美奈子が言う。
「ねそうだねえ、とにかくさ、見せてもらおうよ。
空いてるお部屋ってどんな感じなのか」
「うわー! 桜が綺麗」
このマンションの桜の花があたしたちを迎えてくれた。
それから、管理人さんと話をして、お部屋を見せてもらった。
プライベートルームも作れそうだったし、リビングも綺麗。
かわいい食器を買い揃えたいところだなあと美奈子と二人で話していた。
お風呂もトイレとべつになってるし、スーパーとかも近い。
駅までは歩いて5分ではなく車が空いていれば車で5分だった。
家賃が気になったけれど、早速契約してきて、引越しの日取りも決めてきてしまった。
「頑張って働こうね」
そう美奈子が言う。
「ユカOL時代いっぱい貯金してくれてありがとね。
あたしも資金にと思って花屋で働いてきてよかった。
それに勉強もしたしね」
これから引越しまで忙しくなる。
でも、あたしは美奈子と一緒に新しい家庭とお店をやっていくのが楽しみだった。
家が決まってからあたしたちは大忙しだった。
お店の準備はあるし、引越しは二人ぶんしなきゃだし。
美奈子はそれでも笑顔を絶やさなかった。
そして、あたしは癒された。
「ユカー!
ダンボール貯まっちゃったね」
引越しが落ち着くと美奈子がこどものようにはしゃぎながら言う。
「これで秘密基地とか作って遊ばなかったー?」
あたしは笑ってしまった。
「やった。
やったよねえ。
でも、この部屋があたしたちの秘密基地だよ」
自分で言いながらあまりにも言葉がきざっぽく感じて笑ってしまった。
美奈子はそれはそれは楽しそうに二人の門出がすてきになるように頑張っていた。
アジアン雑貨を置いたり、
トイレットペイパーのカバーを手作りしてポプリを入れたり本当にきらきらしていた。
そんな彼女が愛おしくかわいかった。
お店の広告を出して、
お店も細々とやっている。
けっしてたくさんお客さんがくる訳ではない。
しかし、馴染みのお客様というのもできてきた。
まだまだマンションの仕事部屋でやらなきゃいけない仕事も貯まっている。
美奈子もお花教室をやりたいと頑張っている。
引越しをしてからというもの、
あたしも美奈子もめきめきとお花屋さんらしく成長してきた。
ある日、ちょっと暇になったねと言って、
自宅で二人で花束を作ることにした。
美奈子からあたしの父と母に、
あたしから美奈子の父と母に。
心を込めて美奈子のお母さんが好きなスイトピーを入れた。
美奈子はあたしの両親のために薔薇をたくさん入れてくれた。
大きな花束になった。
そうして、二人で改めてそれぞれの親に揃って挨拶に行った。
「お父さんお母さん今まで育ててくれてありがとう。
それと二人のこと理解してくれてありがとね。
びっくりさせちゃってごめんなさい」
あたしは泣いてしまった。
美奈子が涙を拭ってくれた。
そうして、
「これ私からユカのお母さんとお父さんにプレゼントです」
と言って美奈子がうちのお父さんに花束を渡した。
「二人でなかよくやってね。
二人のお父さんとお母さんなんだからいつでも遊びに来てね」
父はそう言った。
「ユカのことあたし守ります」
とか美奈子がいうもんだからてれてしまった。
そうして、美奈子の家でも花束贈呈をした。
そうして、
「美奈子を全力で守ります」
とあたしは言った。
これはある意味儀式だ。
二人の結婚。
桜が満開の木の下であたしたちはキスをした。
さあ、これから幸せにならなくっちゃ。
一生懸命働こう。
美奈子、花のすばらしさを教えてくれてありがとう。
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