「ファジーネーブルでいい?」
「私、カクテルとかわからないから、夏実のおまかせでいい」
「甘くて飲みやすいと思うよ」
私は、ファジーネーブル二つを注文した。
そして、私のにはウォッカを入れてもらうことに。
甘くて飲みやすいのはいいんだけれど、ついつい飲みすぎちゃうから、
最初からアルコールを高めてもらうとセーブできるから。
「夏実って、こういうバーによく来るの?」
「もう、飲んではしゃげる年齢じゃないから。ただそれだけ」
「やだぁ。私と同じ年齢なのに。
本当だ。夏実の言うとおり、甘くておいしい!」
「でしょ。私が知っている甘いカクテルってそれぐらいなの」
今夜一緒にいるのは、春美という同じ職場の女の子。
26歳じゃ、もう女の子と呼び方は通用しないかもね。
でも、春美は、職場で「おはるちゃん」とか呼ばれて好感度がいい。
素直で明るくて、かわいくて。
私と同じ年齢ということが信じられないぐらい。
「夏実とこうして二人っきりでいると、なんか安心する」
「私も、春美と二人きりのときが楽しい」
私の言葉に、春美は微笑みかけてくれる。
とても、笑顔がかわいくて胸がときめいてしまう。
「このカクテルって恋をしているときに飲んだら、もっとおいしいかもね」
「私、そんな甘い恋をしたことないから、わからないわ」
「じゃさ、私と恋してみない?」
そんなことを言って、私のほうを見つめてくる春美。
まだ、酔っているわけでもないのに、表情がとろんとしていて、
こんなふうに見つめられたら、勘違いしそうになるって。
「なぁんてね。もう、夏実ったら真剣になっちゃうんだから」
「春美とだったら、甘い時間を過ごしてもいいかな」
「え?本当?」
春美はすごくうれしそう。
そして、私の肩に首をもたげてくる。
ちょっと、それには戸惑ったけれど、平静を保つようにしながら
春美のするままにしておいた。
「私たち、いつまでこうして一緒にいられるかな?」
「春美が私のことを嫌いになるまで、一緒だよ」
「じゃ、一生、夏実と一緒だね」
もう、春美ったらかわいいんだから。
バーじゃなかったら、抱きしめてあげたかった。
春美は私に身体をよりそわせながら、私の指に指を絡ませてきた。
「今度から、ここで飲もうね。
居酒屋でうっぷんを晴らすよりもこうして、夏実に甘えられるほうがいいもの」
「うん。春美とこうしているほうが私もいい」
「じゃ、もっと、甘えちゃおうかな」
春美はくすくす笑っている。
こんなとびきりの笑顔見られるなんて、私はなんて幸せなんでしょ。
会社でのいやなことも、私生活でのいやなことも
春美のおかげですべて忘れることができた。
たぶん、また明日になったらいやなことだらけかもしれないけれど、
こうして春美と一緒にいることで私は解放される。
だから、私にとっても春美は大切な人。
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